お世話になっております。
昨年12月16日に令和5年の与党税制改正大綱が発表されました。
例年通り、重要な点に絞って解説させて頂きたいと思います。
1.インボイス制度関係(重要度A)
①
免税事業者が適格請求書発行事業者となることで課税事業者となる場合、売上にかかる消費税の2割を納税額とすることができます。
・免税事業者がインボイスの関係で、課税事業者となる場合、税負担が軽減されます。
②
売上にかかる対価の返還が1万円未満である場合、返還インボイスが不要となります。
・振込手数料を売り手負担とした場合、インボイスの発行をどうするか実務上問題となっていました。
・今後は、値引き処理とすることで返還インボイスが不要となります。
・雑費勘定などを使用している場合、振込手数料に関するインボイスが必要となります。
・特に理由がない場合、値引き処理することが事務的に望ましいと考えられます。
③
基準期間における課税売上高が1億円以下の事業者について、税込価額が1万円未満であれば、帳簿の記載のみで仕入税額控除が認められます。
・課税売上が1億円以下であれば、少額取引についてインボイスが不要となります。
・課税売上が1億円超の場合は、適用できないため、金額にかかわらずインボイスが必要となります。
・現行は、すべての事業者につき税込3万円未満であれば、帳簿の記載のみでよいこととされていますが、これは廃止されます。
・クレジットカードの明細は、請求書ではないため、今後はクレジットカードを使用した場合でも、領収書等の保存が必要となります。
2.電子帳簿保存法(電子取引)の見直し(重要度A)
・令和5年から電子取引は、検索要件・保存要件・改ざん防止策を満たす必要があります。
・売上高5000万円以下の事業者は、ダウンロードの求めに応じれば、検索要件が不要となります。
・売上高5000万円超の事業者であっても、ダウンロードの求めに応じ、紙出力をすれば検索要件が不要となります。
・いずれにせよ、ダウンロードの求めに応じることが要件となるため、電子取引を保存することが必要となります。
・また、改ざん防止策として事務処理規定を備え置く必要があります。(基本様式は国税庁にあります)
3.相続財産に加算する生前贈与の期間を7年に延長(改正前は3年)(重要度A)
延長した4年間は4年間合計100万円(毎年ではない)まで加算されません。
生前贈与を検討している方は令和5年中に贈与をすることが望ましいです。
4.防衛費財源の確保のための増税(重要度A)
・(基準法人税額-500万円)×4~4.5%が課税される(課税所得に対して1%程度の増税)
・中小企業は、課税所得2,400万円程度までは課税されない見込み
・復興特別所得税の延長(期間は未定)
・適用時期は未定だが、令和6年以降の適用となる見込み
5.中小企業の軽減税率の延長、中小企業向け設備投資減税の延長(重要度B)
2年間の延長(ただし、マイニングやコインランドリーなど一部制限がかかりました)
6.先端設備の固定資産税(償却資産税)の見直し(重要度B+)
・家屋と構築物が対象から外れます。
・減免割合が3年間50%へ縮小(改正前100%)
・ただし一定の場合、減免期間が4年又は5年へ
・令和5年4月~令和7年3月までに取得した資産が対象となります。
7.相続時精算課税の見直し(令和6年贈与から)(重要度B)
現行の制度では、相続時精算課税を選択した場合、贈与額が110万円以下であっても贈与税の申告が必要であったが、令和6年以降は不要となります。
改正を踏まえてご不明な点などございましたら、弊所担当又は阿久津太伴までお問い合わせください。
宜しくお願いします。
税理士法人紫峰会阿久津事務所
阿久津太伴
お世話になっております。
阿久津事務所の阿久津太伴です。
3月26日についに、事業再構築補助金の公募要領が公開されました。
今回は、改めてその内容及び要件を確認したいと思います。
なお、今回は速報性を重視した内容となっておりますので、今後情報が出てくると内容が変更される可能性がありますので、ご容赦ください。
また、多くの方に関連する中小企業通常枠に絞って、記載させて頂きます。
第一回公募の受付は、4月15日から4月30日までの予定となっており、GビズIDプライムの取得が条件となっております。今回、多数の公募があることが予測されることから、GビズIDプライム暫定アカウントというものも設定されております。
長文になりますので、お時間がない方は6.まとめ(やるべきこと)の欄だけでもご一読ください。
また、3月29日時点の情報をもとに作成しておりますので、今後の情報は事務局のHP等をご確認ください。
概要
ポストコロナ・ウィズコロナの時代の経済社会の変化に対応するため、中小企業等の思い
切った事業再構築を支援する補助金です(設備投資等が必要な補助金です)。
中小企業 通常枠は、補助金額100万円~6,000万円(補助率2/3)となっており、最低150万円以上の投資が必要な補助金となっております。
要件
申請前の直近6ヶ月の売上のうち、任意の3ヶ月の売上がコロナ前(2019年~2020年3月まで)に比べて、10%以上減少していること。
なお、任意の3ヶ月は連続した月でなくて構いません。
補助対象経費
建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費
FAQによるとパソコンや車両などの汎用性が高いものは、対象外となります。
令和3年2月15日以降に発注したものであれば、補助対象とすることができます。
なお、4.に記載した補助事業に関連する経費である必要があります。
補助事業
下記のいずれかの事業を行う必要があります。
b.は、日本標準産業分類の中分類以下の分類を変更すること(※1)
cは、例えば、製造業の会社がサービス業や建設業を行うといったことです。
d.は、製品等の製造方法又は提供方法を相当程度変更することが要件となります。
※1.例えば、和食料理のお店が焼肉店を運営するといった場合や、計測器を製造している業者が医療用機械器具を製造する場合、金属製品を製造している業者が非鉄金属を製造する場合などです。
a.新分野展開 b. 事業転換 c. 業種転換の要件
新たな製品等(※2)
過去に製造等した実績がないこと
製造等に用いる主要な設備を変更すること
定量的に性能又は効能が異なること(定量的に計測できる場合に限る)
新たな市場に進出する
新製品の販売により、旧製品の売上が減少する取り組みではないこと(製品の代替性が低いこと)
新事業が一定の売上比率になること(比率はaとb.cで異なります)
※2.この他にも、既存の製品に容易な改変を加えた新製品や既存製品を組み合わせただけの新製品は対象外となります。なお、3月29日の改訂で競合他社が行っていないことという要件は撤廃されました。
d.業態転換の要件
5.申請にあたって記載しなければいけない事項
活用する可能性がある方全て
GビズIDプライムを取得すること(第一回公募に申し込む予定でかつ、3月中に手続きできない場合、暫定アカウントを取得すること)
申請前の直近6ヶ月の売上のうち、2019年又は2020年に比べて売上が10%以上減少しているか確認すること
新たな取り組み(新製品・新サービス)及びその設備投資を考える(投資額は150万円以上)
具体例は4.補助事業の項目を参照
新たな取り組みを行う必要性や自社の強み弱み等を考える。その際、swot分析を用いてもよい
事務局HP
https://jigyou-saikouchiku.jp/
事業再構築の手引き
https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/index.html
お世話になっております。
阿久津事務所の阿久津太伴です。
令和3年度税制改正大綱が昨年12月10日に発表されました。
通常国会で審議され、3月頃正式発表となります。
すでに新聞報道等で概要をご存じの方もいるかと思いますが、
実務上の影響が大きい点に絞っておさらいしたいと思います。
中小企業経営者の方向けに、重要度をA、B、Cの3段階で示します。
お忙しい方は、重要度AとBだけでもご一読頂けると幸いです。
また、わかりやすさを重視する観点から、例外規定や重要度の低い部分を省略しておりますので、ご了承ください。
中小企業経営強化税制の2年延長(重要度:A)
中小企業経営強化税制は、中小企業等が一定の機械装置を購入した場合、100%の即時償却又は取得価額の7%(又は10%)の税額控除が適用される制度です。事前に経営力向上計画の認定が必要です。
所得拡大促進税制の2年延長と要件簡素化(重要度:A)
所得拡大促進税制は、給与等支給額が増加した場合、増加した金額の15%(又は25%)を税額控除する制度です。
上記制度が2年延長され、給与等支給額が前事業年対比1.5%(上乗せをする場合2.5%)以上増加していれば、適用できることとなりました。
カーボンニュートラルに向けた投資促進税制(令和5年末まで)(重要度:B)
脱炭素化のための設備投資を行う場合、最大10%の税額控除又は50%の特別償却いずれか適用可能となる制度です。
具体的には、以下の二つです。
① 燃料電池(リチウムイオン電池)、省エネ半導体(化合物パワー半導体)などの生産設備導入
② エネルギー管理設備の導入や外部電力を再生可能エネルギーに変更するといった生産工程等を脱炭素化するための設備導入(脱炭素生産性が1%以上向上する必要があります)。資本金3,000万円超の場合、中小企業経営強化税制を活用するよりも有利となる可能性があります。なお、事前に経営認定制度を作成する必要があります。
電子帳簿等保存制度の改正(令和4年1月1日以降)(重要度:B)
帳簿書類等は原則、紙での備え置きが求められますが、電子帳簿等保存制度に関する届出を提出することで帳簿書類等を電子記録に変えることができます。
一定のシステムを活用して電子帳簿保存制度の承認を受けていた会社が、税務調査で否認を受けた場合、過少申告加算税が5%軽減されるといった改正がなされました。
また、過少申告加算税の軽減をうけることはできませんが、届出を提出しなくても、電子帳簿保存制度が適用できるようになりました。
税務書類の押印廃止(重要度:B)
扶養控除当申告書・保険料控除当申告書・確定申告書等について、押印が不要となります。年末調整事務の簡素化につながると考えられます。
デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制(重要度:C)
デジタル技術を活用したソフトウェア等を導入した場合、30%の特別償却又は3%の税額控除いずれか適用できる制度です。
中小企業経営強化税制はソフトウェアでも対象となるため、そこまで重要度は高くないものと考えられます。
中小企業の経営資源の集約化に関する税制(令和6年3月31日まで)(重要度:C)
認定を受けた中小企業者が、M&Aにより一定の株式を購入した場合、購入した株式の取得価額の70%まで損金算入することができる制度です。
なお、5年経過後から5年間均等で益金算入しなければならない等の要件があり、あくまでM&Aをした事業年度だけ適用できる課税の繰延です。
研究開発税制の2年延長と要件変更(重要度:C)
研究開発税制とは、一定の研究開発をした場合、税額控除が受けられるといった制度です。
いくつか改正がなされておりますが、一定の研究開発の範囲見直しに絞ってご説明します。
一定の研究開発とは、製品の製造又は技術の改良,考案若しくは発明に係る試験研究のために要する費用 ・対価を得て提供する新たな役務の開発に係る試験研究のために要する費用とされております。今回の改正で自社利用のソフトウェア開発費のうち一定のものも控除対象となりました。
なお、研究開発税制は、①要件があいまいなこと②研究開発部門がいないと適用が難しいことなどから適用は限定的と考えています。
いかがでしたでしょうか。制度の詳細について、ご質問等がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
今年4月頃から開始したコロナ関係の支援策も、締切が近づきつつあります。
今回は、9/29時点で茨城県の事業者・個人の方が現在申請できる(又は今後申請できる)コロナ関係の助成金制度を総復習させて頂きます。
該当する可能性があるものがあれば、是非弊所までお問い合わせください。